火:【聴解】日本では信用が重要か、それとも信頼が重要か #817
1、次の音声を聞きましょう。
2、スクリプトを見ながらもう一度音声を聞き、語彙を確認しましょう。
時間があれば、先生の話し方をまねながら、音読もしてみましょう。
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<スクリプト>
こんにちは、ちか先生です。
今日も一緒に日本語や日本文化について考えていきましょう。
今日はですね、日本の社会は信用より信頼を重視しがち?というお話をしてみたいと思います。
これがね、最近トピックに上がっていて、これ面白い視点だなと思ったので、お話ししたいと思うんですけれども。
まずね、信頼と信用って何が違うのかっていうことについて、ちょっと整理してみたいと思うんですね。
英語で言った方がわかりやすいかもしれないんですけど、信用って Credit ですよね、信頼は Trust。
信用というと、やっぱり契約とかルールとか、そういう仕組みを軸にして相手を信用すること、だから、契約書にサインするから大丈夫とか、レビューを見たから安心できるとか、そういう考え方ですね。
一方、信頼の方は、人間関係とか仲間意識とかいった、そういうつながりを軸にして、相手を信じて頼ることですよね、長年一緒にやってきた仲間だから大丈夫、家族とか地元の人だから裏切らないはず、みたいな、こういう考え方ですね。
皆さんは、どっちを選びたいですか。
田舎の方に行けば、不動産屋さんでね、家借りるときも、うちの息子がここで今度1人暮らしするから、ちょっと何々ちゃんのお父さんに頼んであげるよ、みたいなことってありますし、それは日本じゃなくても、結構あるかもしれないんですよね。
じゃあ大都会だったら、全部日本も信頼がなくなって信用になったかというと、そうでもないような気がするんですね、そこがちょっと、日本の特徴かなとも思います。
例えばね、今話した不動産の契約ですけれども、じゃあ田舎だったら、不動産屋さんに丸投げでよろしく頼むねって言うけど、東京だったら契約書にサインするじゃないか、と思いますよね。
でも、その不動産契約すら、信頼に重きを置いているんじゃないかと思うんですよね。
海外全部とは言いませんけど、例えばクレジットスコアを見るとかね、あとはデポジットをたくさん払ってるからいいですよっていう風な、そういう契約だったら信用型じゃないでしょうか。
でも日本の場合は、もちろん敷金とかも払いますけど、プラスで保証人とかね、連帯保証人を、必ず個人に頼まなければならないっていう人がいるんですね。
そうすると、この人がいくら払ったからいいとかではなくて、もっと信頼できる人をさらに連れてきてくださいっていうことになるんですよ、信頼寄りの社会と言えるんじゃないでしょうかね。
ほかにもね、私がよく話していますけれども、日本だと新卒採用という、就職活動のシステムがあって、大学生のうちに一斉にみんなが、よーいどんで就職活動を始めるんですよね。
だから日本の場合は、大体新入社員の年齢とかも一緒なんですよね、一回も働いたことないような人が、新卒一年目で新入社員として入ってくるわけですけれども。
この場合も、あなたを採用しますという契約書を書く前に、日本の場合は、企業が学生に内定というのを出すんですね。
内定というのは、もう決まったよっていう風に会社が学生に伝えるものなんです、言ってみれば、労働契約の予約みたいな感じで、法律的には何の契約も取り交わしていないので。
内定をもらった学生が、「いやでも、A社にも内定もらったけど、B社にも内定もらって、自分は後から内定をくれたB社に行きたい」って言った場合は、A社に内定の取り消しを告げなければならないんですよね。
そうすると、もう企業がすごく怒るわけですよ、内定出したのに取り消すとは何事か、非常識だ、と厳しく非難されるんですね。
でもこれは、法的には何の拘束力もないので、全く問題ない行為なんですよ、でも日本では、社会的な信頼を裏切る行為だっていうことで、ものすごい非難されるんですね。
これもやっぱり、信頼寄りの社会だからとも言えますよね。
政治の世界でも、信頼っていうのは日本では結構大きくて、政治の世界だとね、他の国もそうかもしれないですけれども。
日本の例を言うと派閥とかね、の力関係があって、人間関係が優先している結果、政治家の半分以上は、世襲の議員と言って、おじいちゃんも政治家。
で、その地盤がありますよね、その地盤を継ぐからその子供も政治家で、その孫も政治家みたいになって、その地盤のお殿様みたいになっていくわけですよね。
それも、なんでそういう人が当選するかというと、人間関係が優先されてて、この人のお爺さんが、私たちの村とか町にいいことをしてくれたから、その子供も孫もきっと私たちの味方だろうという、そういう信頼関係ができているっていう、そういうグループだからですよね。
だからね、もしかしたら皆さんの国から日本に来て住み始めたりすると、なんで契約書を作らないの、とか、こんな口約束だけでほんとに守ってくれんのって思うかもしれないですけど。
それこそが信頼型の文化を背景に持っているんだっていう風に理解すると、ちょっとね、見え方も変わってくるんじゃないかなと思いますね。
日本がね、島国であるっていうこととか、単一民族国家ではないんですけど、ほぼ他の国に比べると、日本民族っていうのがすごく多いから、共通の文化とか習慣を持ってるために、暗黙の了解っていうのが通用しやすいっていうことで、わざわざそんな契約書なんて水臭いみたいなね。
そういう、逆に信用の取引をしようとすると、信頼を失ってしまうということもあったりするので、なかなかこう、信用の社会にスライドできないというのもありますね。
なので、もし皆さんが信用の社会から来ているのであれば、ちょっと納得いかないところとかもあるかもしれないですけど、それはね、この違いなんじゃないかなと思って、皆さんに今日はこういうお話をしてみました。
それでは、今日も聞いていただいてありがとうございました。
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3、話の内容について、クイズに答えましょう。
4、宿題を出しましょう
今日の宿題:
あなたの国は信頼型でしょうか、それとも信用型でしょうか。
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