火:【聴解】「先」って過去のこと?それとも未来? #777


1、次の音声を聞きましょう。


2、スクリプトを見ながらもう一度音声を聞き、語彙を確認しましょう。

時間があれば、先生の話し方をまねながら、音読もしてみましょう。

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<スクリプト>

こんにちは、ちか先生です。

今日も一緒に、日本語や日本文化について考えていきましょう。

今日はですね、先という言葉、日本語のね、先という言葉は、過去を表すのか、それとも未来を表すのかということについて、考えてみたいと思います。

もうちょっと深くね、考えてみたいと思います。

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この、先という漢字を思い浮かべてください、先生の先ですよね、これね、過去にも使うし、未来にも使うんですよね。

例えばどういうものに使うかというと「この先をまっすぐ30メートルぐらい行ったところの左側に、郵便局があります」という、「この先」とかね。

あとは「先のことを考えると不安になる」とも言うし、先日の先とかも、先生の先だから、先の漢字を使いますよね。

でもこれ、未来を表すこともあるし、過去を表すこともあるという、ちょっとめんどくさいというかね、こんがらがるような言葉だと思うんですよ。

日本人としては、まあネイティブなのでね、何となくニュアンスで使っていて、そんなに混乱することはないですけど。

いざね、日本語の知識がない、まっさらな外国人に、この、先というのはどういう意味なんだと言われると、意外とちょっと複雑だなと思うんですよ。

これね、昔は未来の意味はなかったそうなんですね、過去だけを指していたんですって、先という言葉が。

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文学作品とかね、歴史資料とかを見てみると、室町時代から戦国時代あたりではですね、先の合戦とかね、先の副将軍というように、これは「前の」っていう意味ですよね。

時代劇のセリフでは、先というのは大体、前のという、昔のという意味になるんですよね。

じゃあ、なぜこんなことが起こったかというと、室町時代のね、人々の話をまとめた本によるとですね。

室町時代の人々、だから今から800年ぐらい前の人々ですかね、は、私たち日本人と、少し違う時間の捉え方をしていたそうなんですね。

室町時代の人々の考え方としては、人は過去の出来事を目の前に見ている、だから、過去が前方というふうに位置づけられている。

逆に、まだ見えない未来は背後にある、だから自分の後ろにあるという考え方をしていたそうなんですね。

だから、先という言葉だと自分の前という意味なので、昔の人にしてみれば、既に起こったこと、もうわかっていること、それは過去、というふうになったんだそうです。

後ろにあること、これからのこと、自分が見えないこと、よくわからないことの事は、後とか、後ほど、と言っていたそうなんですね。

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今でもね、後でと言ったら、未来のことを言ったりもするので、その辺の感覚は中世の人と同じなんですけど。

目に見えるものが前にあって、それが過去で、見えないものが後ろにあって、それは未来である、という時間の捉え方は、現代の日本人とはちょっと違うのかなと思います。

一説ですけれども、近代以降、ヨーロッパ式の時刻制度が日本に入ってきたことによって、時間の流れを直線的に捉えることができるようになった、と言われていますね、日本人がね。

時刻制度が入ってきたっていうのは、この時計をね、見ることができるようになったということです。

でも前にね、江戸時代の時間の感覚みたいな話をしていまして、日本人は実は遅刻がすごく多かったという話をしたんですけれども、これは西洋人が指摘していたことなんですよね。

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西洋人は時間にすごくきっちりしてたのは、この時刻制度、時計を見る感覚があったのに対して、日本人はもっとアバウトに、日が昇ったから仕事に行って、日が沈んだらもう帰って寝ようみたいな感覚だったので、もうちょっと時間の概念がなかった。

それが西洋式になったことによって、日本人も未来を予想することができる、予定を立てるっていうことですね、そういうことができるので、後ろにあるわからないものという認識が、薄くなったのではないか、と考えられているみたいです。

例えばね、問題を先送りすると言ったりもするし、問題を後回しにすると言ったりもしますよね。

この2つは、先と後って、何か反対の意味の言葉のようですけれども、意味は同じで、後でやるということですね。

逆にですね、前と先も同じなんですよね、事前にとか、前日、先日、これも全部一緒ですよね、前と使っても先日と使っても、過去のことを言う、だからね、余計ややこしくなるんじゃないかなと思います。

漢字っていうのは、もともと中国からね、拝借したものなので、中国ではどうなのかっていうのも、ちょこっと調べたんですけれども。

中国では、先という文脈で、未来というのはあまり使わないので、日本人の誤用になってしまってるのではないか、という説もあるみたいです。

これはね、はっきりはわからないので、中国語わかる人に教えていただきたいんですけれども。

この室町時代ね、中世の日本のこの時間の感覚っていうのは、今のアフリカとかね、東南アジアの人々の時間の感覚とか、社会観みたいなのと一緒というか、似ているみたいですね。

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ということでですね、皆さんもたまに混乱することもあるかもしれませんが。

先というのは、もともとは過去のことしか指していなかったんだけれども、時間の概念がはっきりしたことから、未来を予想できるようになって、未来のことにも使うようになった、面白い言葉だそうです。

ということで今回もですね、ちょっとややこしい日本語についてお話ししてみました。

それでは、今日も聞いていただいてありがとうございました。


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3、話の内容について、クイズに答えましょう。


4、宿題を出しましょう

今日の宿題:

先に行ってください、先日はどうも、会議に先だって、先を急ぎます、などの「先」の使い方をはっきりと理解していましたか。

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